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ジェリー・フリッセン インタビュー―マスクマンの正体

2014年8月17日日曜日

2014年8月12日、ユマノイドから『ルチャリブレ―覆面戦隊ルチャドーレス・ファイブ』(発売:パイインターナショナル)が刊行されました。この作品の原作はジェリー・フリッセン。彼は、原作者として、処女作となる『世界を食べたゾンビたちLes Zombies qui ont mangé le monde』や「ルチャリブレ」の世界観に属する『チキティーLes Tikitis』などを手がけつつ、ユマノイドUSのシニア・アート・ディレクターをも務めています。『ルチャリブレ―覆面戦隊ルチャドーレス・ファイブ』の刊行を記念し、以下にジェリー・フリッセンへのインタビューをお届けします。

ジェリーさん、どのような経緯でバンド・デシネの原作者になられたのですか?
実は自分でもよくわからないんです。子供の頃からいつも何かを書いていた記憶があります。当時はバンド・デシネの作家になりたいと思っていました。その後、美術学校にも数年通ってみました。でも、僕は学校というのが心底嫌いで、その時にアーティストになるという考えを捨ててしまったんです。同時にバンド・デシネを読むのもやめてしまいました。その後、再びバンド・デシネの書店に足を踏み入れるのに、5年かかりましたよ。それから書きたいという欲望が少しずつ戻ってきたんです。

『覆面戦隊ルチャドーレス・ファイブ』や『チキティー』といった作品を読むと、プロレスがお好きなようですね。実際にメキシコのプロレス、ルチャリブレがあなたの作品に影響を与えているのでしょうか?
いえいえ。そもそもプロレスそのものを書いたことはないんです。僕が興味があるのはプロレス・ファンなんです。人々はヒーローに憧れ、それになろうとしている。一連の「ルチャリブレ」作品で描いているのはそこです。


もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
僕は今まで特定のスポーツのファンだったことはありません。でも、人がスポーツの話をするのを聞くのは好きだったんです。ファンの情熱は美しいですし、とても惹かれます。たぶん僕自身は特定のスポーツのチームに愛着がないからなおさらなんでしょうね。僕の作品の中ではメキシコのプロレスがよく登場しますが、プロレスそのものにはアプローチしていないんです。このテーマについて書こうと考えたときに、レスラーではなくファンについて語るのが良策に思えました。そのおかげで、僕らが作った世界は、プロレスそのものの世界よりも大きくなりました。怪人やモンスターまで登場してしまうんですからね。

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『覆面戦隊ルチャドーレス・ファイブ』と『チキティー』は同じ世界観に属した作品ですが、どのような違いがあるのでしょう?
『覆面戦隊ルチャドーレス・ファイブ』は僕が最初から温めていたアイディアに近いですね。英語だったら、« in your face »とでも言えそうな、あからさまなショックを扱っています。ロサンゼルスの東部を舞台に、カリフォルニアの文化があって、ラティーノがいて、モンスターが出てきて……。『チキティー』はちょっと違います。『覆面戦隊ルチャドーレス・ファイブ』のアイディアとフランス・ベルギーのバンド・デシネで読んできたことが混ざっています。それに『チキティー』の主人公たちは老人なんです。主な登場人物はみんな60代ぐらいで、お話的にも老齢がゆえの問題や老いにまつわる身体的な問題を一部で扱っています。ルチャドーレス・ファイブの5人はずっと若いですよね。小太りのキャラもいますが、それでも戦うことに支障はありません。
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『覆面戦隊ルチャドーレス・ファイブ』では作画のビルと共同作業をしたわけですが、実際に一緒に仕事をしてみていかがでしたか?
もちろんすばらしかったですよ。ビルは僕が思い描いていたものに形を与えてくれたのですが、僕が考えていたものより良いものにしてくれました。ロサンゼルス東部やハンティントン・ビーチといった場所をよくもまあ正しく理解してくれたものです。キャラクターを動かすのも実に上手ですね。彼が作ってくれたキャラクターたちの行動は完璧です。

今まで一緒に仕事をしたことがなくて、いつか一緒に仕事をしてみたいと思っているアーティストはいますか?
たくさんいますが、1人だけ挙げるとすれば、リチャード・コーベンでしょう。巨匠中の巨匠、天才です。彼と一緒に働けるのであれば、人ひとり殺してもいいくらいですね(笑)。

あなたにとってのヒーロー、アイドルを教えてください。
音楽:ラモーンズ
コミック:リチャード・コーベン
映画:デヴィッド・クローネンバーグ
小説:フィリップ・K・ディック
絵画:マックス・エルンスト

「ルチャリブレ」はアニメ化したりしないのでしょうか?
きっと面白いシリーズもののアニメになるんじゃないかと思っているのですが、今のところそういう話はありません。もしかしたら僕の考えが間違っているのかもしれませんね…

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「ルチャリブレ」シリーズや『世界を食べたゾンビたち』以外に新作の予定はありますか?
はい。数年がかりで構想中の企画が1つありますが、契約書にサインしてしまっているので、残念ながらまだ詳しいお話はできません。


本のコレクターだと聞きましたが、特にデザインに関する本を多くお持ちだそうですね。
ええ。いわゆるデザインブックが好きで、その関連のあらゆる本を集めています。コミックだけではありません。他の本も集めます。実はジャケ買いをかなりしますね。僕はイラスト、デザイン、タイポグラフィ、紙、そういったものが好きなんです。もうずいぶん長いこと、この分野に夢中になっていますから、デザインブックの歴史にも詳しいですよ。ウチに5000冊はあるでしょうか。また古い本の匂いも好きなんですよね。はっきり言って本オタクです。


『覆面戦隊ルチャドーレス・ファイブ』を描いていたときの面白い逸話などありますか?
一番思い出深いのは数年前に行ったサインツアーですかね。ラスベガス、サンディエゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコと旅行したんですが、これだけの距離をあんなに短い時間で車で踏破したのは、あれが最初で最後ですよ。死人が出なくてよかったです(笑)。


今までのキャリアの中で他に何か面白い逸話があれば教えてください。
前にこれはヒット間違いなしというストーリーを書いたことがあるんです。コンセプトから何から大満足でした。これは我が人生最良の作品になるぞと。数カ月後、『となりのサインフェルド』(※)の古いエピソードを見ていたんですが、僕はそこから自分の物語のコンセプトをパクっていたことに気づいたんです… それからというもの、「ああ、いいストーリーを書いた」と感じたときには、「どこから盗んできたんだっけ」と自問することにしています。
※1989年から1998年にかけてアメリカのNBCで放送され、国民的な人気を誇ったコメディドラマ

ジェリー・フリッセンが語ってくれた『ルチャリブレ―覆面戦隊ルチャドーレス・ファイブ』は、8月12日に発売されました。ぜひご一読ください!